『精霊の守り人』 全26話(TVアニメ版) 第六話「青霧に死す」

第六話「青霧に死す」

チャグムは、髪を短く切ってもらった。

「これで、どこから見ても王子には見えんな・・・」

言いながら涙を滲ませ、掌の母からのお守りを、きつく握りしめる。

「本当に大丈夫か?」タンダが心配そうに尋ねる。

「ああ」バルサの決意は変わらない。

「わしも一緒に出ることにした」ロバに乗りながら、トロガイもバルサに同行する。

「世話になった」チャグムはタンダらに別れの挨拶をする。

「バルサ、死ぬなよ」

「ああ」バルサは自らに言い聞かせるように答える。

バルサは、明るい昼間のうちに青霧峠に行き着く覚悟を決めている。

都から派遣された、大規模な山狩り隊の捜索が続いている。

カンバル人の女の目撃情報が山狩り隊指令部に届くが、情報は錯綜していて、東に行ったという情報もあれば西や南もある。

「あの女、山狩りがあると読んでいたようだな・・・この動き、おそらく陽動か・・・」

「お前たちは、どう読む」お頭モンは、ジンらに訊ねる。

「私もそのように考えます」ジンが答える。

他の二人も同じ意見だ。

狩人逹四人の残された方法はただ一つ。

バルサの思考を追うこと。

モン、ゼン、ユン、ジン、四人は、目を閉じ精神を集中させた。

「まずは、あの女が打って出る次なる策に対し、揺るぎ無い一手を返す。

突き止めよ、あの女の一手を。

沈思黙考」

・・・・・

「北だ!あの女は青霧を超える」モンは目を開けると、そう言い放った。

「俺も北と読んでいる」

「「知恵者なら、むしろ青霧は避けると考える」と我々は読む筈と考える」

「ならば、その裏をかいて、やはり青霧・・・」

四人は、口々にそう叫ぶ。

しかし、あの女が我々を殺さなかったのは、何故だ?

その機会がありながら、敢えてトドメを刺さなかったバルサの動きが、思考の邪魔をする。

「やるな・・・あの女。

山狩り隊の力を削ぐばかりか、我らをここに釘付けにしおった」

「ゼン、我らは青霧へ向かう」負傷しているジンらを残し、お頭モンとゼンは青霧山脈へと向かう。

「日が暮れる前に捕えるぞ」

バルサとチャグムは、道中トロガイと別れ、それぞれ別の道を進んでいた。

「いつになく山が遠い・・・」

傷の痛みから、バルサは馬を全速力で走らせることが出来ない。

遠くから鳴り響く馬の蹄の音が、けたたましくこちらに近づいてくる。

「バルサーーーー!」異様な殺気を滲ませ、全速力でモンがバルサの後を追ってきた。

「お前は渓流を突っ切れ。

道と道が分かれるその先に、合流できる岩場がある。

そこで何とか奴の前に出ろ」モンとゼンは二手に分かれ、ハサミ打ちを掛けるべくバルサに迫る。

「走れーー」ハイエナの如く狩人が追ってくる。

「うっっ・・・」

バルサは傷の痛みをかばいながら、懸命に馬を走らせ峠を登る。

遂に、モンがバルサの背中を捉えた。

「捉えたぞ。短槍使い」

モンは剣を抜き、一太刀浴びせんとバルサに迫る。

そこへ、巨大な狼が突如現れ、馬もろともバルサを奈落の底へ突き落した。

「ぬ、おおおおーーー」唖然と谷底を眺めるモン。

バルサを突き落した狼が、チャグムの髪の束を咥え、モンの目の前に戻ってきた。

モンが切りつけるも、狼は俊敏に崖を駆け上がっていく。

「お頭、無理です」

モンは崖を下りチャグムの安否を確認しようとするが、ゼンに止められる。

「だが、王子が!」

「ここで、あなたにまで逝かれては」

谷底では馬が絶命している。

「うわぁーーーー」

悲惨な情景が、チャグムの死を覚悟せねばならないモンを慟哭させる。

狼が駆け上がった断崖の上で待っていたのはトロガイであった。

「あいつなら自力で登ってこれると思ったんだがね~。

許しておくれ」

全ては、トロガイの放った妖術であった。

王子チャグムの死が報告された都では、葬儀が執り行われた。

チャグムを見送る葬列の民の中に、タンダの顔もある。

そこへ女が声を掛ける。

「薬あるかい?」

「追えば突き殺すと言われて、俺は待つしかなかった。

これじゃまるで、武人の女房だ。

無事だったんだな、バルサ」

「すまなかったね。

ただ、今は少し眠りたいんだ」

その横で、チャグムは自らの死を目の当たりにしたのだった・・・

第六話 終

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