『精霊の守り人』 全26話(TVアニメ版) 第七話「チャグムの決意」

第七話「チャグムの決意」

「あれ以来、何も起こらない・・・にしても、良く生き延びたもんだね・・・」

バルサは夜更けに、ふと目を覚ますと、傍らで寝ているチャグムの腹に手を当ててつぶやく。

上空から滝が落ちてくる、歴代の帝の威風堂々たる巨大な彫像が立ち並ぶ宮廷の庭。

帝は聖導師に命じる。

「チャグムの彫像を彫らせよ。」

「分かっておる。

末代までその遺影を残すことが許されたのは、帝の地位に着いた者のみであることは、重々承知のうえだ。

だが、チャグムの死によって、この国は水妖から守られたのだ。

その尊い犠牲を、末代まで伝えんとして何を伝える。

これで渇きの相も晴れよう・・・」

田舎町とはいえ、昼時の店先は賑やかになる。

バルサの横に座っているチャグムは、興味津々辺りを見回す。

そこへ、タンダがやって来た。

「なあバルサ、今、町はお前の噂で持ちきりなんだぞ」

バルサの無警戒な立ち振る舞いが、タンダを不安にさせる。

「噂の人物が、こんな所で飯を食ってるなんて誰も思い付きやしないよ。

試してみるかい?」

バルサは相変わらず、意に介していない。

それどころか、近くで飯を食べていた武人に近づくと、

「ちょっといいかい。

あんた、短槍のバルサって用心棒を知ってるかい?」

「なに、バルサ?

そいつはな、宮に火を放って王子を殺し、あげく、千の追っ手と大立ち回りを演じて、おっ死んだ大悪人よ・・・」

と、武人との会話で遊ぶ始末である。

これにはタンダも飽きれ顔だ。

「シュガよ、もう、秘文を読み解く必要は無くなった。

星読みの勤めに戻るがよい」

聖導師は、秘文解読の任を捨てきれない、失意のシュガに言い聞かせる。

「ああ・・・、何という無力、何という無能、私は何も為すことが出来なかった・・・」

チャグム亡き今、何をしても無意味である現実が、シュガを悲嘆に暮れさせる。

バルサ、チャグム、タンダの三人は、新たな家を手に入れるべく町を抜けた。

「そういや今までだったら、お前の仕事はもう終わってるんだよな?」

「終わりなのか?」

タンダの、バルサへの問いかけに、反応したのはチャグムであった。

「普通、用心棒稼業というのは、敵を退けたら終わりだからね~」

チャグムの問いかけに、バルサが返す。

「金を払わなければ、何だって手に入らない。

市井では、何と金が幅を利かせておるのじゃな」

チャグムは、同時にバルサから、金が無ければ何も出来ない、庶民生活の現実を教えられる。

「ここが今日から、私たちが住む家よ」

バルサとチャグムの新しい家は、町外れの古びた水車小屋。

「こんなに買ってきたのかい?」

「ああ、お前たちに、美味しいものを食べさせてあげようと思って」

町で買い物を済ませ、タンダも帰ってきた。

夜、三人で久しぶりの食事中に、チャグムが神妙な面持ちであらたまる。

「二人に話があるのだ。

今まで世話になった。

この耳飾りは、余の感謝の印だ」

そう言うと、チャグムは母のお守りを差し出す。

「受けた恩義の数々は、一生忘れぬ。

余はこれから、一人で生きていこうと決めた」

・・・

二人は、笑い飛ばす。

「あんた、そんな事考えていたのか?

チャグム、あんた此処を出てどうやって生きて行くんだい」

今度は、バルサがあらたまる。

「馬鹿だね、お前はずっと此処に居ていいんだよ。

この世にはね、金なんか貰えなくたって、あんたみたいな子供を放っておけない奴が結構いるものさ」

「でも、生きていくためには金がかかるのだろ?」

チャグムは、食い下がる。

「安心をし、そんな事お前は考えなくたっていいんだから」

「うわあぁーーー」

チャグムはバルサの言葉を聞くと、泣き崩れた。

その夜、バルサの寝顔を見つめ、チャグムがつぶやく。

「ありがとう、バルサ・・・」

「渇きの相は消えていない!」

宮廷で星読み中のシュガは、依然として乾きの相が晴れてはいない事に気づくのです。

第七話 終

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